社団法人日本証券業協会が考える日本の金融教育とは

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(twitterよりキャプチャ) 

 

本日は金融商品取引業の健全な発展を図り、投資者の保護を目的として活動している全国の証券会社を構成員とする社団法人である日本証券業協会の方に日本の金融教育、前半部では現在の金融教育について、後半部では金融教育の今後についてお話を伺いました。

 

II 日本の義務教育では証券投資は学習指導要領には入っていない

 

ーー本日はよろしくお願いしたします。僕は日本の資産運用業界について危惧をもっていて、金融業界の中で唯一の成長分野であるのにも関わらず、日本は依然として資産運用の人材が育っていなかったり、顧客に対してきちんとした情報が伝わらないまま販売が続けられていたり、そもそも金融リテラシーが低かったり、投資対象としての日本株自体の成長が乏しかったりと、色々と問題を抱えています。様々な方への取材を通してこの問題の解決の糸口を見つけて解決したいと考えており、今回はアポイントをとらせていただきました。今回は日本の金融教育の現状と今について取材をし、今抱えている問題点について深掘りをしていきたいと考えております。まず簡単に主な活動内容についてお伺いしてもよろしいでしょうか。

 

 

 はい、まず簡単には学校の先生方に対して教材の提供、セミナー、勉強会の開催、またメールマガジンやウェブサイトを通じて金融教育を行う先生方に参考にしていただくような情報を発信しております。他には講師派遣などを行なっております。教材の内容としましては、起業や経営陣として事業の立て直しを追体験してもらえる内容となっております。

 ただここで重要な点としては一般の人向けに教材を提供しているのではなく、あくまで教育課程の学校で学ぶべき内容にフォーカスしております。教材の中で教えている主な内容としては、投資教育には限らず、金融の仕組み、株式会社の仕組みなどを教えています。金融や経済を専門としていない先生が担当なさることも多いのでその場合にも対応できるような役割を果たしています。

 

 

ーなるほどですね。政治経済の科目だったりの教育過程の中で教えるべき内容について教員の方が知らない内容だったりを教えるための補助的な役割をになっていらっしゃるということですね。資産運用や株式投資という部分もその中には入ってらっしゃるのでしょうか?

 

 

 実は現段階では入っていません。今の学校で教える教科書の中では、いわゆる証券投資という言葉は出てきておらず、貿易用語として海外からの資本の移転などのところで少し出てくる程度なんです。このせいで一般の認識では、投資というのは企業がやる設備投資などがメインであり、個人が関わって行うものという認識があまりないのが現状です。なんで投資をするのか?というそもそもの投資の意義のところをそもそも理解していない人が多いというのが現在の現状です。

 

 

II アメリカやイギリスも義務教育での投資教育が日本より進んでいるわけではない?!

 

ーー今までのお話を考えると、今の現状としては日本では義務教育には投資という部分を教える機会がなく、投資の意味を理解していない人がほとんどであるというのが日本の低い投資割合を示しているのではないかなと思いました。少し話はづれるのですが、資産運用が活発なアメリカなどでは投資教育というは一般に広く知れ渡っているものなのでしょうか?

 

 

 それはないと思います。もちろん、より実践的な内容を含めたものや分厚い投資の理論を書いてある教科書は存在しておりますが、アメリカでは日本の学習指導要領のようなものが国で制定されているわけではなく各州によって教える内容が変わってくるので満遍なく行われているかといわれるとそうではなく、きちんと教えられているか否かは州の規定だったり、先生の力量によるものが大きいと考えられます。

 アメリカで資産運用が進んだのは教育の影響よりも、日本は高度経済成長の後でバブルが崩壊し、その後高値を更新することなく株価が全く成長しなかったのに対してアメリカは大きく株価が伸びて多くの人が儲かったと、その影響もあって周りが儲かっているなら、と多くの人がさらに投資を始めるようになったというのが大きいでしょうね。投資というものは最初知識がない中で飛び込んでみると意外とわかってきたりするものですから。

 

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ーーそうなってくると、やはり投資教育や金融教育をしてもそもそも日本の株が成長していないので結局投資先が存在せず、資産運用は成長しないという結論になってしまいますね。日本株を成長させるために、昨今話題になっているコーポレートガバナンスをもっと日本企業に徹底させていくことがどちらかと重要になると考えていいのでしょうか?

 

 

 もちろんそれも重要だと思うよ。ただ色々実は考え方があって、実は日経平均の一番高値のところで一発どん!って買っていて今持っていたら下がっていて損をした、ということになるのだけれども、資産運用の基本である長期、分散、積立で資産を運用していたら一番高値のところから買い始めても儲かっているんだよね。だから、解決の方法は色々あると思っていて、もちろん日本株がそういったコーポレートガバナンスで成長していくという解決方法もあるけれど、投資教育をきちんとしていくというやり方でも解決は十分可能であると思っているからやっているんだよね。

 

 

II まもなく10年の一度の学習指導要領改定で資産運用・投資が義務教育化となり、日本の金融教育は着々と進んでいる

 

ー現在、金融教育をやられているということでしたが、現在スタートされてから着実と結果などはで初めてきているのでしょうか?

 

 

 少しずつ効果はでてきていると思います。学習指導要領がいま変わっていて、来年再来年から学習指導要領の中に、自助、資産形成、資産運用という言葉がようやく入ったんですよ。これは10年に一度の改定で、今回そういう単語が入ってきたので、学校でも学ばなきゃいけいなよという動きが出てきています。そういういった意味ではこれからの学生さんはだんだん投資に対して知識がある人が増えてくると思いますスパンにすると10年くらいですかね。

 ただ3年に1回行なっている全国調査でのアンケートの一つとして「証券投資は必要と思うか?」という質問で、1/4だけが必要あり、3/4が必要ないと答えていました。これは世の中の結構な割合の人たちが、金融だとか、証券というものに興味をもっていない実情を表していて、教育はどちらかというと知りたいという興味がある人に対して教えるものなので興味がない人に対してはなかなか教えることができないという特性があるからいきなり社会人に投資教育をしても伸びないというのが現状だと思っています。学んでもらえる前にまず気づいてもらわなければならない。だからこの3/4の人に興味を持ってもらうのがそもそも大事で、今はまだ投資に興味をもってもらう下地づくりの1段階目で、下地をつくるために学校に教育をしています。

 正しい知識と投資の理解、投資=ギャンブルなんだという認識をまずは崩す、投資というのは社会に必要なインフラで知っておくべきことなのだということで、それでようやく下地が育つ。それがスタートラインで、運用するしない、リスクに応じてどう選んでいくのか。社会人としてどう学んでいくのかというところになっている。いろんな道の中で各段階ごとに対応していくのがその後にまた求められてくるでしょうが、とりあえず下地のところはつくることができると思っています。

 

 

ーーなるほど、本日はありがとうございました。義務教育での投資教育が進むというのであればかなり効果は期待できそうですね!!

 

 

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日本証券業協会では、投資の時間(http://www.jsda.or.jp/jikan/)という初心者向けの投資の勉強のためのウェブサイトを運営していらっしゃいます。最初から読み進めれば一般的な投資の知識を身に着けることができるような設計になっており、初心者の方には非常にお勧めできるサイトです。中級・上級以上になると投資も一般的な勉強というものは存在せず千差万別な内容になってしまうのが難しいところですので、まずは最初に!という方向けのサイトです。

 

 

今回のインタビューでは日本の金融義務教育は着実と進んでいることがわかり、金融リテラシーについての向上も官の方からかなり活動的に動かれているということがわかったので、今後は民の方から解決に向けて動かれている方、また実際にコーポレートガバナンスの徹底により日本株の成長を促すために活動されている方、実際の資産運用業界の方に話をお聞きしながら、解決の糸口を見つけていきたいと考えております。