日本人の金融リテラシーは実は高い!? ibbotson 山口勝業取締役会長インタビュー

 

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(会社HPよりキャプチャ)

 

 日米をはじめ世界中の多くの金融機関や投資運用業界で高い評価を受けているIbbotson Associates, Inc.の日本法人会長であり、アメリカでファンドマネジャーを歴任されたこともある山口 勝業さんに、日本の資産運用が進まない原因について、最後に少しだけ資産運用業界でのキャリアについてお話をお伺いしました。

 

II 「日本の家計金融資産のうちの株や債権などの割合が低い」のは統計の取り方に問題がある

ーー本日はよろしくお願いします。僕は今、『日本再興戦略』において、「資産運用業を日本の成長戦略として東京の国際金融センターとしての地位の確立を目指す」というものがあるのですが、まだまだ日本の家庭金融資産のうち15%ほどしか株式・投信などのリスク性の資産に投資されていない現状を危惧しております。

 

 

 その問題については色々な意見があって、よく金融庁が"日本人は株式投資をする人が少ないからもっと投資しろ、投資しろというのだけれども、アメリカにも超大金持ちがいれば、ダウンタウンで普通に暮らしているような人もたくさんいて皆が資産運用を勉強してやっているというとそうでもないんだよね。アメリカの上位5分の1の人たちが全金融資産の8割を持っていて、彼らが多くのお金を投資に回しているから金額を家計で割って平均を取ると、凄くアメリカ人は投資をしているように見えるんだよね。

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ーーというと、日本人もアメリカ人のダウンタウンの人たちと比べれば、そこまで資産運用をしていないわけではないということでしょうか?

 

 

 もちろん、アメリカ人の一般家庭も日本人に比べたら、株式や投信などの資産を持っている人は多いと思うよ。統計に出ているのは大げさすぎるということでね。一般家庭がもっている理由は、資産運用に積極的だからというよりも確定拠出年金に入ってる人が多いからで、1990年代から2010年代にかけてアメリカの金融資産のパフォーマアンスがよかったからで、結果としてある程度持っているということになってるんだよね。日本は始まったのが十数年前でまだまだ上限金額も少なくて、確定拠出年金に加入している人の半分くらいが預貯金だから、これからだね。

 

II 日本人の金融リテラシーが低いのは日本の法制度の問題?!

 

ーー資産運用をしてない理由として一番に"金融リテラシー"が低いというのがあると思っていて、アメリカ人に比べて日本人が"金融リテラシー"が低いのがこの問題の根本原因だと思っていたですが、そういうわけでもないということでしょうか?

 

 

 もちろん、金融リテラシーが低いというのもあると思うよ。そもそもお金について考える機会がアメリカに比べて少なくて、例えば確定拠出年金の違いと、税金制度の違いがあると大きいと思う。

 一つ目の確定拠出年金について、日本ではまず会社が拠出してあげてその後従業員がマッチング、一方でアメリカではまず従業人が拠出してそれを会社がマッチングするから、自分ごととして考えやすいのよね。さらには、アメリカでは退職金制度がないから、定年退職時にまとまったお金がもらえないので、自分で若い時から頑張ってやろうという意欲がある。

 二つ目の税金についてもやっぱり意識的になれるかどうか、日本では源泉徴収で税金について考える機会が少ないから中々勉強しようという気概にもならないよね。

 

 

ーーなるほど、では金融リテラシーが低いのをもし解決しようとしたら結構税制だったり法律だったりと官側の制度体制の問題が大きいんですね。僕のキャリアとしては、日本の資産運用業界の課題として抱えていることをインタビューを通じて明らかにしていき、民間側から解決して行きたいと考えているのですが、民間側でできることはあまりないですかね?

 

II 民間での金融リテラシー解決にはファイナンシャルプランナーがあるかも

 

  民間で解決できる話としたら、ファイナンシャルプランナーとかかな。アメリカではファイナンシャルプランナーとかIFAと呼ばれる人たちが結構いて富裕層に対して仕事を行なっている。そういうのが一般的だから資産運用を相談するのは結構当然というようになっているけれど、日本は少ない。日本でもIFAとかファイナンシャルプランナーとかはいるんだけど、弁護士とか税理士とかみたいにお客さんからフィーを貰っているわけではなく、販売手数料として金融機関側から貰うという仕組みになっているため、実質証券会社のセールスマンみたいになってしまっていて、本当の意味での顧客本位の資産運用アドバイスとかはできていないのよね。

 

ーーそれはそちらの方が儲かるからなのでしょうか?日本でも金融機関ではなく、顧客からフィーを貰う形のファイナンシャルプランナーが出てきてもおかしくないと思うのですが。

 

 

 も、あるけれど、日本人の多くがサービスはタダと思っているのが大きいと思うよ。日本人は病気を直してもらえたとか、法律で問題を解決してもらったとか目に見える形のサービスにはお金を払うけれど、投資のアドバイスには中々お金を払わない。投資はアドバイスをしてもすぐに結果がでるわけじゃないから、10年とか経ってやっと目に見える大きな結果がでるものだから、難しいんだよね。

 

 

ーーそれでもアメリカ人は結構お金を払うっていうのはメンタリティの違いが大きいんですか?

 

 

 メンタリティの違いと、あとはまた制度の話だけれど、税金のアドバイスができるかが大きいね。日本では税理士しか税金のアドバイスができないけれど、アメリカでは税理士だけでなく、IFAと一部の公務員もアドバイスができるんだ。お金に関してのアドバイスは収入を増やすのと支出を減らすものが存在するけれど、税金に関してのアドバイスは比較的短期で支出を減らすという目に見える結果が出やすいから、アメリカではメジャーになっているのもあるかもね。

 後、IFAに関していえば最近は投資信託よりもコストが安いETFがメジャーになってきて、投資信託は選ぶの大変だったけれど、ETFは誰でも簡単に変えるからファイナンシャルアドバイザーの価値ってなんだろうとなってきているからそこにチャンスが生まれるかもしれないね。

 

 

ーーなるほど、IFAの業界などを調べてみたらまだまだ民間で解決できるところがありそうですね。ありがとうございます。

 

II 行ってみて面白い資産運用会社は独立系

 

ーー最後に少しキャリアについてご相談したいのですが、僕は資産運用業界に進みたいと思っており、アナリストなどのキャリアを積みながら問題解決する活動も続けていきたいと考えています。どのような進路がよいでしょうか?

 

 

 難しいね。アナリストはMiFid2とかの影響でセルサイドアナリストは冬の時代とか言われているから、運用会社のバイサイドアナリストがいいね。大手金融会社の子会社の運用会社ってのが多いけど、、行って面白そうなのは独立会社の運用会社かな。面白い運用をしている知り合いもいるから今度紹介するよ。

 

 

ーーぜひ!よろしくお願いします!