日本にはカネがあるけどタネがない

2019年5月22日に金融審議会から提出された市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」を巡って、twitterfacebookなどのSNSなどでは様々な声が飛び交い、老後に2,000万円足りないのではないかという不安だけが残ったがその問題に対する解決策はまだ出ていない。

 

この2,000万円問題の本質をじっくりと考えると、年金制度を整えている「厚生労働省」が年金制度が破綻するといった年金の問題点を指摘した報告書なのではなく、「金融庁」が老後も安心して暮らすためには年金だけに頼らずに計画的に資産をつくるために積み立て分散投資などの運用が必要であることを伝えるために出した報告書であることは容易にわかるものである。

 

にも関わらずこのような炎上が起こり、国民を不安に駆り立てた原因に「日本人の金融リテラシーが低い」ことがあると考える。

 

以下の棒グラフを見てわかる通り、先進国と比較しても日本人の資産の現金率は異様に高く2018年3月時点では米国が15%程、欧州が30%程なのに対し、日本では50%を超えている。1996年の金融ビックバンに始まり、貯蓄から投資へが叫ばれ始めて早20年近くになるが、日本の金融資産のうち現金の占める割合はほとんど変化していない。

 

 

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 (図の引用先:https://www.nikkei.com/article/DGXKZO39315330S8A221C1EA2000/)

 

「日本人は経済に興味がないから、金融リテラシーが低いのだ。興味を持ってもらうのは難しいから諦めるしかない。」と言われればそれまでであるが、戦後日本人は「エコノミックアニマル」と揶揄され、一時は世界第二位の経済大国まで上り詰めたのにも関わらず、このように金融リテラシーが低い現状になってしまっているのはなにか原因があるはずと私は考える。

 

また金融リテラシーや金融への興味で思い出したが、私は資本主義の世界であるから当然皆資本家を目指しているものだと考え高校、大学と生きてきたが、大学で出会った人の大部分の人はそうではないという事実に驚いたことがある。

 

この日本人の金融リテラシーが低いという問題はただ単に個人の金融資産が投資・資産運用に回らないという問題には留まらない。

 

以下のグラフを見てもらえばわかる通り、日本企業の内部留保は年々増加し続けている。この記事によると、人手不足を補う生産の自動化のための投資や賃貸用不動産の建設投資は増加しているが、利益の伸びに比べると設備投資の伸び率は小さく企業が利益を溜め込む構造は続いているとのことである。

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 (図の引用先:https://www.asahi.com/articles/ASL933C3QL93ULFA002.html )

 

これらのことからわかることは、日本は今「カネがなく、投資のタネがない」という最悪の状況にあるわけではなく、「カネはあるがタネがない」という状況なのである。

 

もう少し時間が経ち、「カネもなくてタネもない」という状況になってしまえば、日本は救いようがなくなってしまうが、今はまだカネがある。あとはタネを見つけ出す事さへできればいいのだ。そしてそのチャンスは今がラストであると考えている。

 

実際国もタネを探そうと官民ファンドを作成し、JDIなどに投資をしたが失敗をしてしまっているのが現状である。

 

このように金融リテラシーの問題は一個人の金融資産に留まらず、日本の未来を考える上では欠かせない重要テーマなのである。

 

そしてこのような現状を踏まえて考えると、今が日本人の金融リテラシーの底上げが日本のGDPを増加させ、投資のタネを生み出す最後のチャンスとなると思っている。

 

しかし、ここで問題なのが「日本人の金融リテラシーが低い原因はなぜなのか?」という一見簡単に見える問いに対する答えが見つかっておらず、最適な解決策をうつことができないということである。

 

一応の仮説として日本人の金融リテラシーが低い原因は、

1. 日本の源泉徴収制度のせいで本気で税金などについて勉強しようという意欲がないこと。

2. 学校の授業に組み入れられておらず金融教育を受ける機会がないこと。

3. 金融の勉強に関してきちんとしたものを発信している媒体がないこと。

など考えられるがクリティカルな原因がわかっていないのが現状である。

 

そういったことから、私はこれから、様々な形で日本の投資、金融リテラシーに関わる人たちへの取材を通じて「なぜ日本の金融リテラシーは低いのか」ということを解き明かし、原因を突き止めたのあればそれを解決したいと考えている。

 

そして必要であれば金融リテラシーが高くアメリカやシンガポールに取材に行き、その結果を日本に伝える形で日本の金融リテラシーの向上、ましてや日本のGDPの発展に寄与したいと考えている。